前書き
802.11acと802.11nの速度の違いをrobocopyを使って調べてみた。
理論値を見るだけでなんとなくわかった気でいたが、実際に測定してみると驚くほどの違いがあったためここで共有したい。
またこの検証によって、robocopyを多重で実行してどのくらい速度が上がるか、多少理解することもできた。場所や環境によって違いは出るとは思うが、参考にしていただければ幸いである。
robocopyの同時実行数を順番に上げていき、実際にかかった時間と速度を表にした。無線環境の導入などを考えている方々に参考になればと思う。
検証環境
検証方法は、WindowsクライアントからrobocopyでWindowsサーバにデータを送り、その際にログを取得して速度と所要時間を計測するというものだ。検証環境のOSとネットワークアダプタ、そして使用した無線ルータは以下の通りだ。
送信側 | 受信側 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit | Windows Server 2016 |
ネットワークアダプタ | Intel(R) Dual Band Wireless-AC 8265 | Intel(R) Gigabit CT Desktop Adapter |
ルーター | Archer C2300(TP-Link社製) |
検証環境を図にすると以下のようになる。
※関係ないとは思うが、CPUとメモリも書いておいた。
ここでお伝えしておきたいのは、送信側のWindowsクライアントのネットワークアダプタはデュアルバンドである。無線ルータであるArcher C2300(以下C2300)はアンテナが3つあるが、実質2つのみ使用していることになる。
この記事は802.11acと802.11nの速度の違いをメインにお伝えしたいので、デュアルバンドやトライバンドといった技術には触れないのでご容赦いただきたい。
検証方法
検証方法は少し前述したが、詳細な方法を書く。
ひとつのrobocopy(1セッション)で送信するファイルサイズは3GBである。つまり2セッションでは6GBとなる。これを順番に上げていき、最大10セッションでどれくらいの速度が出るのか計測した。
速度の計測の仕方は、一つ一つのrobocopyのログから速度をMbpsとして確認し、最終的にそれらをすべて足すというものだ。
3セッションのrobocopyを実行したとき、それぞれのログ上で以下のような速度となっていた。
・セッション1:24.0 Mbps
・セッション2:24.0 Mbps
・セッション3:24.1 Mbps
つまりrobocopy3セッション同時実行では、24.0 + 24.0 + 24.1 = 72.1 Mbps の速度が出ていることになる。
検証結果
さて、検証結果は以下のようになった。
参考として、1000Mbpsの有線で接続しているときの速度も記載する。
802.11ac(5GHz) | 802.11n(2.4GHz) | 有線(1000Mbps) | ||||
セッション数 | 所要時間 (分) |
速度 (Mbps) |
所要時間 (分) |
速度 (Mbps) |
所要時間 (分) |
速度 (Mbps) |
1 (3GB) |
0:03:34 | 115.1 | 0:07:42 | 53.3 | 0:02:17 | 179.7 |
2 (6GB) |
0:03:41 | 222.8 | 0:12:25 | 66.1 | 0:02:06 | 393.3 |
3 (9GB) |
0:04:18 | 286.1 | 0:17:06 | 72.1 | 0:02:04 | 591.9 |
4 (12GB) |
0:05:23 | 305.6 | 0:21:46 | 75.5 | 0:02:33 | 647.6 |
5 (15GB) |
0:05:57 | 345.1 | 0:26:45 | 76.8 | 0:02:54 | 705.6 |
6 (18GB) |
0:06:39 | 370.3 | 0:30:56 | 79.7 | 0:03:20 | 728.4 |
7 (21GB) |
0:07:28 | 385.0 | 0:33:23 | 86.2 | 0:03:25 | 830.9 |
8 (24GB) |
0:08:21 | 393.8 | 0:36:07 | 91.0 | 0:03:58 | 811.6 |
9 (27GB) |
0:09:07 | 405.7 | 0:40:04 | 92.3 | 0:04:17 | 837.3 |
10 (30GB) |
0:09:45 | 421.5 | 0:44:01 | 93.4 | 0:04:36 | 861.9 |
この検証でわかったことは、robocopyではどうしてもアプリケーション側で速度を抑えてしまうということだ。
1セッションの速度を比較すると、約2倍くらいの違いしかない。しかし10セッション同時転送を比較してみると、4倍以上の差が出ている。
余談であるが、robocopyではなくftpで3GB(1セッション)のファイル転送をしてみたところ、以下のようになった。
《FTPで3GBのファイルを転送》
802.11ac(5GHz) | 802.11n(2.4Ghz) | |
FTP転送(3GB) | 約 300 Mbps | 約 80 Mbps |
この結果から、802.11ac(5GHz)と802.11n(2.4GHz)の速度の差は、約4倍ということになる。(デュアルバンド使用時)
後書き
もし僕が、802.11ac(5GHz)と802.11n(2.4GHz)のどちらで無線環境を構築するかと問われれば、即座に「802.11ac(5GHz)」と答えるだろう。
しかし5GHz帯の無線は壁を通り抜けず反射してしまう。つまり仕切りや壁の多い場所では、5GHz帯よりも2.4GHz帯の無線の方が安定するということはあるだろう。
でも2.4GHz帯の無線には干渉しやすいというデメリットがある。実際にわたくしの環境でBluetoothマウスを使用しているときに、802.11n(2.4GHz)の速度が減少した事象が認められた。
僭越ながら僕の予測では、これからの無線技術は2.4GHz帯以外の帯域での方で開発されていくのではないかと想像する。
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